これまで述べてきた社会的連帯経済を実現する手段・方法として私は以下のようなネットワーク構想を考え実践してきました。それは新たな社会の実現をめざして人々が4つのネットワークを形成し協力しあうことです。4つのネットワークとは、生活圏での「市民ネットワーク」、府県レベルでの「広域ネットワーク」、これら市民ネットワークと広域ネットワークを全国でつなぐ「全国ネットワーク」、またこれらを世界とつなぐ「国際ネットワーク」です。すべて競争社会を超えて協力社会を築くためのネットワーク形成です。高齢のために現在では実践活動はほとんど中止していますが、以下では市民ネットワークから国際ネットワークまでの実践例を順に説明しましょう。まず市民ネットワークはこれまで関わってきた大阪府和泉市と堺市南区での活動例です。

和泉市の「自然、歴史、文化を創造・保全するネットワーク」は2016年1月29日に設立準備会を開催し6月12日に設立総会を開催しました。個人の集まりですが、和泉市を代表する各種団体の代表者にお集まりいただき、名前の通り和泉市の自然、歴史、文化を創造し保全する政策案を市民の立場から提案していくネットワークです。組織の代表は津田直則が務めてきました。

生活圏の市民ネットワーク、広域のネットワーク、全国のネットワーク、世界のネットワークを連帯でつなぎ、新たな社会を形成することが私どもの目標です。このようなネットワークを形成することになったいきさつを、2004年から学生と始めた地域貢献活動からの発展として以下のパワーポイントで示したいと思います。
 津田直則「和泉市のネットワーク形成」(パワーポイント)



谷山池の公園案化は、次の私 津田の「和泉山脈の自然を生かす構想」の中でも述べています。和泉山脈の尾根を走る近畿自然歩道やその枝道を地域の歩行路で延長し、それを公園とつなぐ案です。
「和泉山脈の自然を生かす構想」『いずみの国の自然』28号 (2015年4月)  

以下の「谷山池保存を求める会」は初期のホームページです。谷山池及びその周辺の貴重な自然を保存する運動の火を消してはなりません。
http://ms-izumi.net/taniyamaike/


泉北ニュータウン学会は2006年5月に設立されました。私もその設立にかかわった1人です。4つの分科会を開催して地域の課題を解決することをめざして出発しました。

しかし10年近く経った頃に私に連絡がきて学会の再生に向けて協力してほしいとの要請を受けました。うすうす知っていましたが、一部の部会を除いて学会は求心力を失い活動が停滞していたのです。活発だったのは、歴史部会とコミュニティ部会が実施する地域の祭り(みどりのつどい)だけでした。会員は激減し高齢化していました。

6人で再生会議が始まり、2017年7月の総会で私が新たな会長に選ばれました。しかし市民の信用を失っていた学会の再生は容易ではありませんでした。まず始めたのは市民対象の講座です。2018年1月から1-2か月おきに学会の講座として続けました。内容は、泉北ニュータウン誕生秘話、新たな労働者協同組合法、和泉市での森林活動、地域がかかわる子どもの教育、高校生が親と考える職業選択、堺市に広がる須恵器の分布などです。
その後取り組んでいるのは、堺市に広がる古代須恵器遺跡の保存運動と、孤立する高齢者を市民のネットワークで支援する仕組みの形成という2つの問題です。須恵器の保存運動については以下をご覧ください。

須恵器の保存運動というのは次のような問題です。歴史的に大変貴重な文化遺産である須恵器の窯跡が、近畿大学の医学部と附属病院の移転用地先として消滅する危険にさらされています。更に窯跡だけでなく住民の憩いの場である公園も破壊し、2キロも離れた場所に移転させられようとしています。住民たちや古代史研究者たちは一方的な都市計画に怒っています。

古代、泉北ニュータウン地域は西暦400年頃から平安時代に至るまで約500年の間1000基余りの窯で須恵器の生産が営まれていました。わが国陶器産業発祥の地といえる地域です。2019年に世界遺産になった仁徳天皇陵古墳でもこの須恵器の大がめが発見されており、地域全体が貴重な文化遺産だといえます。 しかしこれらの窯跡はほとんどが泉北ニュータウンの開発で消滅してしまいました。残っているのはほんのわずかで、それが近畿大学の病院・医学部・大学グラウンドの移転用地先にあるのと、移転によって取り壊される公園の移転先の濁池にもあるのです。住民への説明会もほとんど行わず事実だけを先行するやり方に住民は立腹しています。それは次の2019年4月に行われた公聴会の記録をみてもわかります。移転計画への賛成発言はまるで行政が仕組んだサクラそのものの発言であるのも推測できます。公聴会の後に掲載しました近畿大学医学部・病院等の配置図、窯跡マップ、すえむら濁池の窯跡を守る会から堺市長への要望書も併せてご覧ください。最後の要望書は、私が会長として責任を取る立場から引き受けたものです。
 平成31年度第1回堺市都市計画公聴会記録
 泉ヶ丘窯跡マップ
 すえむら濁池の窯跡を守る会から堺市長への要望書


広域ネットワークの具体例に移りましょう。大阪労働学校アソシエは、労働の尊厳を回復させることを目標として設立された社団法人の学校であり、2016年4月に開校しました。この学校も広域ネットワーク組織の一員です。この学校は、全日本建設運輸連帯労働組合・関西地区生コン支部(関生=かんなま)が結成50周年を記念して建設した「労働館・関生」に入居しています。アソシエは労働組合のリーダーを育てるだけでなく、新たな社会を建設するリーダーを育てることをめざしています。大阪労働学校の名前は、協同組合の父賀川豊彦が戦前に設立した大阪労働学校の名にちなんでつけられています。私も講師陣と理事に名前を連ねています。 講師・津田直則の担当講義は「協同組合論」です。社会的連帯経済と協同組合コミュニティ論を中心に講義を組み立てました。2020年度ではコロナウイルスのため東京と大阪を結んだオンラインでの授業を行っています。

労働学校アソシエホームページ http://www.ols-associe.or.jp/

 


広域ネットワークの拡大をめざすシンポジウムの例を取り上げます。
社会的連帯経済をめざして-3.25シンポジウム-:2017年3月25日13時~16時
主催:大阪労働学校アソシエ社会的連帯経済研究会(津田直則主宰)共催:ソウル宣言の会
開催場所:大阪労働学校・アソシエ(学働館・関生)

広域ネットワーク拡大をめざして2017年3月25日に大阪でシンポジウムが開催されました。パネラーは広域ネットワークを持っている新潟県、東海三県(愛知、三重、岐阜)、近畿2府4県から4人が集まりました。討論の進行係は私 津田が引き受け、日本における非営利セクターの現状、その発展の必要性、その方法などについて議論し、シンポジウムは成功裏に終わりました。


<3.25シンポジウムから見えてきた方向は次のとおりです> 今後はこれらを運動の原則として更に市民・広域ネットワークを拡大していきたいと思います。

 ・社会的連帯経済(非営利セクター)を発展させることは重要である。
 ・市民ネットワークと広域ネットワークの協力で地域課題を解決することが必要である。
 ・ネットワークを通じて競争社会から協力社会への転換と市民社会の確立が望ましい。
 ・ネットワーク拡大にはトップダウンではなくボトムアップが望ましいと考えられる。
 ・ボトムアップには学会方式よりも横のつながりを重視するネットワーク方式が望ましい。
 ・上の2つよりより、市民・広域ネットワークの積み上げによる全国ネットワークの実現が望ましい。
 ・規制の強いネットワークよりも緩やかなネットワーク(包容力のある連帯)が望ましい。  

 <ネットワーク形成で何が可能になるでしょうか>
 ・地域ネットワークでは  

  協力しあって地域の課題を解決することで協力社会の基礎が可能になる。 市民社会の政策形成能  力の向上につながる。生活困窮者支援、子育て支援、コミュニティの再生(祭り復活等)、環境の  保全等がテーマ。

広域ネットワークでは  

  協同組合、共済、NPO、労働金庫、信用組合等の理念・価値の共有が可能になる。非営利組織メ  ンバーが多様であるほど社会的連帯経済に近いネットワークが可能になる各種事業提携、コンソ  ーシアム形成、基金創設等が可能になる。

全国ネットワークでは   

   新たな政党の創設が可能になる。法制度構想、国際ネットワーク形成などが可能になる。

国際ネットワークでは   

   国際間での学習により社会的連帯経済の体制論的発展が促進される。

 

以上の3.25シンポジウムとその総括については次の論文をご覧ください。クリックすると出てきます。

津田直則「社会的連帯経済への道ー資本主義のオルタナティブ」『変革のアソシエ』No.29(2017年6月号)


次は国内のネットワークと海外を結ぶ例です。2017年10月にイタリア・ボローニャ大学マルゾッキ教授を日本に招待しました。目的は、イタリア協同組合並びに非営利組織全体つまりイタリアの社会的(連帯)経済を日本に紹介していただくためです。スポンサーは上で取り上げた大阪労働学校アソシエです。招待期間は1週間で、大阪労働学校と東京の法政大学で講演をいただきましたが多数の参加者により成功裏に終えることができました。講演内容は私がマルゾッキ教授に直接依頼をして、連帯思想とその実践が制度・システムとどのようにつながっているかを説明いただきました。この日本講演を通じてマルゾッキ教授とはファーストネームで呼び合う親しい関係になりました。



欧州の協同組合は日本よりもはるかに長い歴史と伝統を持っており、仕組みの面でも私が名付けた「連帯システム」という制度・システムを形成しています。欧州レベルの大物マルゾッキ教授を日本に招いた理由は、この連帯システムを学ぶためです。 マルゾッキ教授講演会の内容は以下の拙稿をご覧ください。

津田直則「イタリアの連帯思想とその実践-ボローニャ大学J.マルゾッキ教授講演をめぐって」季刊『変革のアソシエ』No.32、2018年3月.


次は国際ネットワークの例です。社会的連帯経済を世界に広める運動をしており我々とつながっている国際ネットワーク組織を取り上げます。第1は韓国ソウル市長が中心になっているGSEF(グローバル社会的経済フォーラム)、第2はフランスのモンブラン会議ですが紙面の都合で省略します。この両方の国際組織は2016年9月にカナダ・モントリオールで開催されたGSEFの国際会議でつながりました。このように、国際ネットワークは世界に拡大していっています。今後はこのような国際組織がさらに増えていくでしょう。

GSEF(グローバル社会的経済フォーラム)は、韓国朴 元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長(2020年7月死去)が中心となって広げた国際運動組織です。2013年のソウル宣言、2013年のGSEF憲章が基礎になって、社会的(連帯)経済をめざす国際運動は韓国を中心として世界へと広がりつつあります。2014年のソウルでの国際会議には日本から100人が参加しました。

 GSEF2014年韓国ソウル大会


2014年のソウルGSEFでは、私 津田も分科会で社会的経済の重要性とその課題というテーマで発表しました。日本語での発表内容は次の通りです。
津田直則 [2014]「ソウル宣言の意義と社会的経済の未来」韓国GSEFでの発表   画像

GSEF国際会議は2年ごとに開催されることになり、次は2016年9月7~9日にカナダ・モントリオールで開催されました。モントリオール大会の情報は次のサイトを参照してください。
 http://www.gsef2016.org/?lang=en

GSEF2016カナダ・モントリオール大会(大会実行委員会主要メンバー)



GSEF2018.10 スペイン・ビルバオ大会


ビルバオ大会の報告
ビルバオでの国際会議に関係した情報を以下に3件掲載します。第1は、連帯労組関生支部機関紙『くさり』からの依頼で書いた原稿「世界で発展する社会的連帯経済」です。第2は、NPO法人共生型経済推進フォーラムが開催したGSEFビルバオ大会報告集会の「報告書」です。第3は、大阪労働学校が開催したGSEFビルバオ関西報告集会で私が報告した「資本主義を超える社会構想と戦略ー関生戦略との統tuda 合案ー」です。

津田直則「世界で発展する社会的連帯経済」連帯労組関生支部『くさり』2018年11月10日号

NPO法人共生型経済推進フォーラム「GSEFビルバオ大会報告集」

津田直則「資本主義を超える社会構想と戦略ー関生戦略との統合案ー」『労働法律旬報』1933, 2019年4月上旬号.


 

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