日本資本主義の縮図ともいうべき物語があります。それは第二次大戦後生まれた建設業界の中の生コンクリート業界において、大企業に搾取されている中小企業経営者とそこで働く労働者たちが搾取と闘ってきた50年以上にわたる物語です。しかもこの物語は、資本主義の矛盾を克服していく労働組合戦略を生み出した戦士とそのリーダー武建一の物語でもあります。しかし正義のために命をかけて闘ってきた彼の生き方は真実を知らない多くの人たちから誤解を受けてきました。彼の闘いは、搾取の根源である大企業資本との闘いだけではなく、それと一体となった検察、暴力団その他の右翼、更には彼を裏切った共産党等との闘いでもあります。以下では彼の聡明な頭脳とそこから生み出された日本の未来を切り開く戦略について説明いたします。彼の支持者は、労使関係論の研究者や地域ユニオンなどを中心に、全国に広がってきています。

まず最初に説明すべきは生コン業界の構造です。生コンクリート業界は第二次大戦後に生まれた業界ですが、1960年代以降の高度成長期以降の姿は以下のようでありました。中小企業の集まりである生コン生産企業は、大企業からセメントを仕入れ、それを原料として工場でいわゆる生コンクリートを生産し、ミキサー車に積んで建設現場に運び、建設企業であるゼネコン大企業に納品していましたが、セメント大企業とゼネコンという大企業の間に挟まれていたために、セメント企業からはセメントを売りたたかれ、ゼネコンからは生コンを買いたたかれ、大企業に対しては公正な取引は望めない構造的な弱さをもっていました。またこの業界は前近代的で、そこで働く労働者はこのような環境下の経営者から搾取され、劣悪な環境で暴力団が管理していたことが常態であったのです。1年の内で休暇は正月3日のみ、残業は月300時間という恐ろしい業界で、労働者はいわば大企業からの搾取と経営者からの搾取という二重の搾取を受けていたのです。

次に生コン業界の労働組合が立てた戦略に移ります。この生コン業界労働組合のリーダーが武健一です。彼は奄美諸島の徳之島から大阪の生コン業界に就職した中卒の若者でしたが、業界の劣悪な労働条件や不当な解雇などに反対し強い正義感と洞察力からから次第に労働組合のリーダーとして頭角を現していきます。 彼が企てた戦略は、業界の構造を見抜いたうえで、生コン経営者にも労働者にもプラスとなる戦略で、今日多くの労使関係論研究者や運動家が支持し始めているものです。彼の戦略は2つの重要な項目に分けることができます。

戦略の第1は、労働者が競争し合って賃金を引き下げていることに注目し、企業別ではなく職種別で交渉して同一労働同一賃金という目標を立てたことです。つまり企業段階の労働組合ではなく産業段階の労働組合のみに労使交渉の決定権をもつように変えていったのです。この統一交渉という方法によって労働者が互いに競争して不利な結果に陥ることを防いだわけです。

武健一の戦略の第2は、中小企業経営者が大企業から搾取されている実態に注目し、労働組合との協力関係を呼びかけたことです。方法としては、事業協同組合を設立してこれにより大企業と交渉し、経営者同士が競争し合って不利な結果にならないようにしたことです。この2つの戦略は大阪を中心とした近畿二府四県に広がりました。労働組合は連帯労組の生コン支部という形態で統一し、使用者の協同組合は広域協同組合(広域協組)という形態で統一するに至りました。目標を実現する手段はストライキです。生コン業界がストライキをすると現場の建設は完全にストップしてしまいます。生コンは遠方から運べない技術的性格を持っているからです。

ただこのストライキという手段は、大企業の背景にいる総資本との命がけの闘争でありました。それは大企業が右翼や暴力団や検察を使って力づくで闘いを挑んでくるからです。欧州では産業別労働組合による交渉やストライキは普通です。ストライキをしたために逮捕されることもありません。しかし日本では労働組合には闘う力は殆どありません。労働組合は欧州や米国と違い企業内組合であり、経営側に遠慮してストライキのような強い手段はとらなくなってしまいました。生コン業界のようなストライキをすると、検察・警察権力は力づくで犯罪をでっちあげ逮捕するのです。国家権力は大企業とは国会議員を通じて密接に結びついています。またセメント大企業の息のかかった生コン経営者がアウトサイダーとして連帯組織の戦略をつぶしにかかってきます。連合などの労働組合は、ストライキはしなくなり関生連帯労組のような闘う労働組合には味方してくれません。日本の労働組合は搾取されている労働者を救う力は殆どなくなってしまったというのが現状です。その意味で生コン業界の連帯労組は弱い者の味方をする正義感の強い闘う労働組合だといえるでしょう。日本企業の99%以上が中小企業です。2000万人以上の非正規労働者がいる日本資本主義を変革する先頭に立っているのが生コン業界の連帯労組です。

2018年8月28日に武健一連帯労組委員長並びに数名の仲間が滋賀県警によって逮捕されました。ゼネコン大企業に対抗して弱小の中小企業経営者が協同組合を組織し、対等取引を行う行為を「恐喝」とでっちあげたのです。不当弾圧に対する抗議声明が各地で出されています。以下の下線をクリックすれば文章がでてきます。

その後武委員長が逮捕されてから3か月間で29名に上る逮捕者がでてきました!2019年4月現在では逮捕者は50人を超えています。勾留中の人間は20人です。警察権力は労働組合つぶしを目論んでいることが明らかです。大企業に盾突くのはゆるさんという方針です。刑務所への勾留理由はどうでもいいのです。その証拠に11月21日に大阪地裁で行われた武委員長その他の勾留理由開示公判で、勾留を決定した裁判官本人が、弁護士の追及に思わず「労働法は勉強不足、正直ナマハンカなので責任もって言えない」という大変な発言をしたのです。詳細は以下の関生弾圧「勾留理由開示裁判報告」をご覧ください。

11月29日勾留理由開示裁判報告 

このような労働組合への不当弾圧は戦前の特高警察がやっていたことと同じです。このような動きに対して各地で抗議運動や抗議声明がどんどん拡大しています。以下の資料をご覧ください。

2019.3.10集会チラシ表
2019.3.10集会チラシ裏
労働組合つぶしの大弾圧を許さない12・8集会
憲法違反の労働組合つぶしを許さない
連帯ユニオン抗議声明 
管理職ユニオン関西機関紙『New FACE』での転載
大阪労働学校アソシエによる抗議声明

労使関係の研究者たちは上の検察・警察の国家権力の動きをどのように見ているでしょうか。例えば、労使関係論の専門家・熊沢誠(甲南大学名誉教授)さんは2019年3月10日の集会で次のように述べています。管理職ユニオン・関西の機関紙に掲載されたその内容を読んでみてください。

熊沢誠「労働組合つぶしの大弾圧を許さない 3.10集会報告」

この集会での報告で、熊沢さんは私と同じく検察・警察のやり方は戦前の特高警察と同じであると断じています。またこれはファシズムの始まりだ、黙っておれば誰もが災いをうけると述べています。

次に労使関係の専門家である木下武男(元昭和大学教授)さん及び浅見和彦(専修大学教授)さんが関生連帯労組の戦略を高く評価している点を取り上げましょう。それは以下の2人の討論並びに木下論文を読めば理解できます。

浅見和彦・木下武男討論(2015/10))「次世代の業種別ユニオンー労働組合再生の方向性」『POSSE』Vol.28.
木下武男(2016/7)「業種別職種別ユニオンの構想」『季刊・労働者の権利』Vol.315.

以上の浅見・木下両氏の考えは、日本で2000万人にも達する非正規労働者を救う道は、各地に生まれている業種別・職種別ユニオンを拡大してジェネラルユニオンとして育てる道であり、その先駆的労働組合が関西の生コン連帯労組であるというものです。業種別職種別ユニオン運動については次のサイトをご覧ください。

「業種別職種別ユニオン」運動の研究会HP-TOP

また関生連帯労組委員長武健一と研究者たちとの討論会の模様は以下をご覧ください。

熊沢誠・木下武男・武健一による特別シンポジウム(2018/8)『コモンズ』121号

連帯労組は東京での研究者や業種別職種別ユニオン研究会などの仲間によって業種別ユニオン連続講座を開催することになりました。第1回は2018年8月新御茶ノ水・連合会館にて開催されました。その模様は以下のサイトをご覧ください。

連合会館での業種別ユニオン連続講座第1回目の模様


私の意見を最後に掲載します。私は武健一委員長が実行してきた戦略は、以上で掲載した労使関係論の専門家と同様に、日本の未来を切り開く最先端の戦略であると思っています。以下で掲載するのは私が研究してきた新たな社会を実現する戦略と武健一の戦略を統合する案についてです。大阪労働学校で開催された「GSEFビルバオ大会関西報告集会」で報告した内容です。

 津田直則「資本主義を超える社会構想と戦略-関生戦略との統合案-」(パワーポイント)

津田直則「資本主義を超える経済体制と実現の戦略-関生運動を基礎にー」『労働法律旬報』1933, 2019年4月上旬号